著者ジャン・ブランによれば、ロゴスの危機を救うこと、ソフィストが「ロゴスからすっかり断ち切ってしまった」超越性との関係をロゴスにとりもどすこと、これがプラトン哲学の課題であった。
ソクラテスは自らが誤った考えを抱き続けるくらいなら、いくらでも反駁されたいものだと語った。それは弁論術をいかなる技術よりもすぐれたものであるといい、都合よく相手を説得するための技術であるというソフィストの利己主義的なロゴスへの態度とはおよそもっとも離れたところにあるものだといってよい。弁論術によるロゴスの頽廃はソクラテスの死を招いた。
プラトンの「イデア論のすべて、認識の分析のすべて、本質と関与についてのあの論述のすべて」が目指すのは、人間が万物の尺度であるという立場に抗して「人間の言論をもって超越性」に「立ち返るための出発点とすること」である。著者の描き出すプラトンは、一面的あるいは反動的にすぎるように見えるかもしれない。本書はプラトン哲学の小さな俯瞰図である。この小さな書物が読者に不足感、飢餓感を与えるとすればその使命は果たされたというべきだ。というのも読者はその不足感を充足すべくこんどはみずからプラトンの著作へすすまずにはいられないだろうから。(八雲出)