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藤沢令夫 『プラトンの哲学』


■書誌■

書 名  『プラトンの哲学』  書影
著 者  藤沢令夫 
叢 書  岩波新書新赤版 537 
出版社  岩波書店 
頁 数  227頁 
定 価  640円(本体) 
発 行  1998年01月20日 
ISBN  4-00-430537-3 


■書評■

もしあなたがこれまでにハイデガーニーチェ経由でしか(あるいはハイデガーニーチェを経由したさらに別の著者を経由してしか)プラトンの思想にふれたことがないのなら、ためしに本書を読まれてはいかがだろうか。もしあなたがこれまでに原典であれ訳本であれプラトンの諸作品を読み、腑におちない思いを抱えてきたならば、やはり本書を読まれることをお薦めする。少なくともここにはプラトンを積極的に活かすひとつの読みが提示されているのだから。そしてもしあなたがあなたなりにプラトンを解釈する術をお持ちなら、その場合も本書を読まれたい。きっと本書はあなたの善き対話者となるだろうから。

本書の目的はプラトンプラトンの諸著作の範囲で読むことである。どういうことか。「アリストテレスの著作をプラトンの著作への入門手引き」として哲学教育の方針とした新プラトン主義哲学者の態度に代表されるように、アリストテレスのしたてた概念の枠組みでもってプラトンを読解・批判する態度は現在でも散見される。「形而上学批判」と称してプラトンのイデア論を攻撃する手合いがそのよい例だ。アリストテレス(あるいはそれに類するその他)の言葉と影響によってくもらされたプラトンの哲学を、読み直すこと。それはプラトンの言ったことと言わなかったことを区別することでもある。

イデアとは世界がわれわれになにか「として」あらわれてくるさいに、その価値判断の規範となるものである。プラトンははじめからこのように述べたのではなかった。藤沢氏が本書で示すのは、さまざまな困難を克服しながらその思想(イデア論)を鍛え上げて行くプラトンの歩みゆきだ。それは自分が何事かを知っていると思いこむ以前の状態につねに自分をおく「無知の知」を実行しつづけたひとりの人間の思想的営為である。イデア論がどのような意義と問題をもつ思想であるかを本書とともに見届けることが重要なことはもちろんだが、そこになにか結論めいたもの、終着点を求めるのではなく、ただそこがプラトンが最後に立っていた場所であったことも忘れないようにしたい。思索は死によって不可避的に未完成のものとなる。

なお、恣意的な解釈の泥にまみれたプラトンの哲学からそれらの泥をとりのぞくという藤沢氏の努力もまたひとつの解釈であることは言を俟たない。それはたとえば成立順序が不明なプラトンの諸著作に著者なりの順序を与えていること――プラトンの思想の遷移を考える作業と不可分だ――からも明らかである。むろん重要なのは、著作の成立順序の是非に拘泥されることではなく、著者の解釈を検討することである。(八雲出)



■リンク■

哲学の劇場 > GP MAP > ROUTE#003「プラトン――哲学の起動」‐プラトンをテーマにした批評集。(当劇場内)

哲学の劇場 > 作家の肖像 > プラトン‐プラトンの略歴情報。(当劇場内)

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