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岩崎昶『現代日本の映画――その思想と風俗』


■書誌■

書 名  『現代日本の映画――その思想と風俗』 
著 者  岩崎昶 
出版社  中央公論社 
頁 数  330頁 
定 価   
発 行  1958年05月05日 
ISBN   


■書評■

日本映画は現在、どこにあるのか? 自身が映画製作者でもある岩崎昶氏は、軍国主義時代以降の映画界を「潜在的戦犯」と内省しつつ、戦後ようやく芽生えたという現代日本映画を太陽族映画の登場にいたるまで検証している。戦後日本の映画界は、軍閥に服従したがために主体性が欠如した戦時中とはうってかわってダイナミックな転換をむかえる。民主化を謳うアメリカの急速な反共化に伴い、日本映画の本質も必然的に民主化映画や接吻映画といったアメリカン・ウェイ・オブ・ライフを謳歌するテクストから、今井正や亀井文夫らの独立プロ作品、『きけ、わだつみの声』のような反戦映画、そして海外で絶賛されることとなる『羅生門』や『地獄門』へと、時代とともに変化を遂げていく。そして『太陽の季節』が銀幕を飾った1950年代後半、日本映画はようやく「成年に達した」と作者は主張する。つまり、現代日本独自のアイデンティティが形成されたというのである。マルクス主義者として戦時中、牢獄生活を強いられた岩崎氏は、東宝争議や独立プロをめぐる活動についても言及している。

テクストや作家主義的観点から書かれている本書からは、当時の観客や映画ファンの様子はやはりつかみにくい。また、戦後の日本映画がどのような形で戦後に影響を与えたのか? アメリカだけでなく、ヨーロッパの影響はどれだけ強かったのか? 疑問の残る点は少なくない。しかし映画論を超えて一種の日本論、日本人論を試みたという点で、『現代日本の映画』は大変興味深い仕事である。田中純一郎や佐藤忠男の日本映画論と比較して読む価値があるといえるだろう。(北村洋)



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