本書は、敗戦後のドイツ(主に西ドイツ)における知識人たちの振るまいの歴史をたどる書物だ。ナチズムとその一連の運動がもたらしたユダヤ人虐殺を含む諸問題、廃墟からの経済的復興、68年の学生運動、分断と統一への道のりまでのおよそ半世紀を概観する。著者は、その困難な時代の中で同時代を生きた作家、哲学者、社会学者、政治家ら諸知識人が、どのように時代や社会と切り結んだのかを豊富な事例によって描いて見せる。著者は素材の選び方は恣意的であると断っているが、小さな書物ながら情報量は多く、戦後ドイツの知的な風景についてさしあたって概観してみたい読者には十分有用である。巻末には8頁にわたる西独の政治・経済・社会・文化に関する略年表がついている。ただし、残念ながら肝心の索引はついていない。
書物の性質上、内容の梗概をここに記すことにほとんど意味がないので、代わりといってはなんだが登場する主な知識人の名前をリストアップしてみる。
ヘッセ、トーマス・マン、シュテルンベルガー、ミッチャーリッヒ、ブレヒト、ハイデガー、ヤスパース、ハーバーマス、マルクーゼ、アドルノ、ギュンター・グラス、ハインリヒ・ベル、ハンス・ウェルナー・リヒターとその主催による47年グループ、エンツェンスベルガー、スローターダイク、ウーヴェー・ティム
また、このテーマに関心のある読者は、同著者による『戦後ドイツを生きて――知識人は語る』(岩波書店、1994)や『文化とレイシズム――統一ドイツの知的風土』(岩波書店、1996)も併せて参照されたい。(八雲出)