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ゲーデルによる不完全性定理の古典的解説書。ゲーデルの不完全性定理とは、ひとことでいえば「ある無矛盾の公理系のなかには、Aも証明できないしAの否定も証明できない、というような命題Aが存在する」(第1不完全性定理)ということであり、「公理系が無矛盾であるかぎり、公理系はおのれの無矛盾性を証明できない」(第2不完全性定理)ということである。つまり「公理系は本質的に不完全である」ということだ。しかしこの「ひとことでいう」というのが曲者であって、これをひとことで理解してしまった日には「あらゆる問題はゲーデル的問題に帰着する」とか「理性は自らの正しさを証明できない」、さらには「この定理によって人間の理性の限界が示された」などと居酒屋でくだをまくことになるのである(もっとも、ゲーデル・ブームを体験していない若い読者にはその心配はないのかもしれない)。それはそれで結構なことだが、その前にもっとこの定理自体がもつおもしろさ(数学のおもしろさといってもよい)を味わってみても損はなかろう。本書では、ゲーデルが具体的にどのようなステップを踏んでこの定理を証明したかを読者が実際に体験することができる。記号や式、証明にゲーデル数を割り当てていくことによって形式的計算を完全に算術化し、この定理の証明を再現したときに感じる興奮は、「理性は自らの正しさを証明できない」というようなオチを口にするときの空しさとはまったく違った充実感を与えてくれる。そして本書のもつ意義もそこにあると私は信じる。(吉田浩)
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