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プラトン 『ソクラテスの弁明』


■書誌■

書 名  『ソクラテスの弁明』   Apologia Socratis 
著 者  プラトン   Platon  
訳 者  久保勉    
叢 書  岩波文庫青601-1   Platonis Opera 
出版社  岩波書店   Oxford University Press 
頁 数  文庫判117頁    
定 価      
発 行  1927年07月03日    
ISBN      


■書評■

ソクラテスの弁明はそれ自体が大いなるイロニーである。彼が告発に対して弁明を行うのは、自らの生のためではなく、神からの賜物である得難い人物(ソクラテス)をアテナイ市民が永久に失うという罪を犯すことがないように、である。それは、過去にも多くの善人をほろぼしたものがほかならぬ大衆の誹謗と猜忌とであることを熟知した男の発言であることを忘れてはならない。

彼が、この最大の危機に直面しながらもそれがために悪評を招き、告発されるにいたった活動−他者の言説と行為の整合性の吟味−をやめない理由は三つある。一つには、死をおそれて恥辱にあまんじるべきではないこと。二つ、人間に従うよりもいっそう多く神に従うべきこと。最後に、死はいまだ何人にとってもそれが善きものであるか悪しきものであるかが自明でなければ無闇にこれをおそれる理由のないこと。告発者はソクラテスに恐るべき死を与えた。だがむしろ死をおそれるのはほかならぬ告発者ではなかったか。なんともわからない死に「夢ひとつない眠りの快さ」をさえ重ね、それが善きものかもしれないことをほのめかすソクラテスの無邪気さを、ひとは笑うだろうか。

しかしひとしきり笑ったあとに気付くかもしれない。死を善きものと期待することと無闇におそれることは、さほど変わらないのだということを。ソクラテスを笑ったわれわれの無邪気さをこそ、ソクラテスはたしなめたのだと。(八雲出)



■文献案内■

『ソクラテスの弁明』の邦訳にはつぎのものがある。

『世界の名著6 プラトンI』(田中美知太郎責任編集、中央公論社、1966)
『プラトン全集 第1巻』(田中美知太郎訳、岩波書店、1975)
『ソークラテースの弁明・クリトーン・パイドーン』(田中美知太郎+池田美恵訳、新潮文庫フ-8-1、新潮社)
『ソクラテスの弁明・クリトン』(三嶋輝夫、田中享英訳、講談社学術文庫 1316、講談社1998)
 本邦訳書にはクセノポン『ソクラテスの弁明』も訳出されている。



■リンク■

・ROUTE#002「哲学の分水嶺」−当劇場内の書評ROUTE。
・ROUTE#003「プラトン――哲学の起動」−当劇場内の書評ROUTE。



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